仮住まい宅にはマナオ(タイでのレモンのようなポジションの柑橘)の木があり、それはコロナ禍以前から知っていたのだけど、自分の家ではないのであまり観察していなかった。
状態としては鉢植えでもなく地植えでもなく、地面に土管状の物を置いて土を入れ、そこで木を育てているというタイにはよくあるスタイルなのだけど、ヨリミチとしては根が窮屈そうでかわいそうに思ってしまう。
高さは多分1mくらいで、枝はわりと横に広がっている。
数年前の時点でもう実を付けていたのだけど、今回こちらに滞在することになったときにマナオの様子を見に行ったら結構すごいことになっていて、枝は伸び放題、実もかなり付いていて、まず実を取るよりも枝をどうにかしようよ、という状態だった。
そして我々が入居してから2週間くらい経ったときに大家は庭木の剪定(というか、屋根や電線にかかっている枝を落とす)をするために植木屋さんを呼んだので、ついでにマナオの枝も邪魔になっているところは切ってもらった。
それはヨリミチが庭に出て行って『この枝も切って下さい』と頼んだのだけど、植木屋さんは鉈で太い枝を切り落とし、塀の向こう側の草むらに枝を投げてから『あっ、実を取っておけば良かった』というような顔をした。
ということは、そこそこ良い実がなっているということ?!と睨んだ。
オットはコロナ禍以降仕事が激減しているので本業以外の手段で収入を得たいところなのだけど、オットは他力本願というか常に受け身で仕事をしているので痺れを切らしたヨリミチが『マナオを売ってみたら?』と提案した。
そこで取り敢えず大きな物を十何個か取って顔見知りの商店に持って行った。
が、このときは採ってから数日が経っていて、実が少し軟らかくなっていたので『使えるようなら使って下さい』と言って置いてきた。
するとそれなりに使えたようで、多分翌日の惣菜の調味料として使われ、惣菜は店頭で売られて完売したと思う。
そしてオットには『使いましたよ』という LINE が届いていた。
なので仮住まい宅のマナオの実はハズレではないということが判ったので、採ればそれなりの値段が付くのかもしれない。
というか、あの商店に定期的に買い取ってもらえるかもしれない。
なのでオットに『もっと必要ですか?』と商店に聞いてもらったら、『市場では3キロ50バーツなので、果汁がたっぷり、香りも良ければそのくらいの金額で買い取ります』という返事がきた。
ヨリミチとしては、それなら3.5キロくらい収穫して50バーツとか30バーツ(商店の言い値)を受け取り、また時期をみて適当な量を持ち込んで・・・ということを考えたのだけど、どこかが単細胞なオットは『(サイズ的に)採れる物は全部採る!』と言ってどんどん実をもいでいき・・・
大きめのレジ袋がかなり重くなった。
それを商店に持ち込んで量ってもらったら5キロあったという。
そして店のおばさんは『じゃあ100バーツね』と言って奥から100バーツ札を持って来た。
え?
3キロで50バーツが相場なら、5キロだと80バーツくらいじゃないの?!
でも100バーツくれると言うのなら貰っておくけど。
という謎の計算のお代を受け取った。
その前日だったか、マナオを売れるかもしれないという話を大家にしたときに『商店の仕入れは3キロ50バーツと言っていたから私達のマナオも(何キロ持って行っても)50バーツかもしれない』と伝えたら、『あら、そう。まあいいわ。タンブン(お寺などへの寄付・喜捨という意味)だと思うことにするから』のような反応で、ちょっと不満げに見えたのだけど、そんなこと言ったってそもそもあなたはマナオを売ったことはないし、高い金額が付くような手入れだってしていないじゃないか!と思ってしまった。
それなのに『え?それしか値段がつかないの?』のような態度に出られてヨリミチは内心ムッとしてしまった。
なので100バーツで売れたことは言いたくなかったのだけど、オットが言ってしまった。
事実を知ったところで大家は我々に売上金を請求するわけではなかったのでそこまでの極悪人ではないようだけど。
でもオットの仕事仲間の家にあるマナオの大木はある年に何万バーツも稼いでくれたというのだから、仮住まい宅のマナオも大切に育てれば将来はオットとヨリミチの『金のなる木』になるかもしれない。
けど、その頃にはオットとヨリミチは自宅で生活しているはずなので、マナオの稼ぎは全額大家の財布に入るということか・・・。