昨年、オットの娘が遺した全ての物を片付ける事になり、オットとヨリミチは何週間かかけて作業をした。
オットの前妻は娘に関する物は見るのも触るのもイヤで、『とにかくここから全部出しちゃっていいから!』と言うばかりだった。
ヨリミチは前妻のその感覚はそのとき限りのものかもしれないと思っていたのだけど、結局前妻は娘の遺品を受け入れる事なく、過去に娘が母の日などに贈った工作の作品(幼稚園や小学校の授業の物と思われる)を『これは娘がくれた物だから』と言って取っておく程度。
それは娘の部屋から厳選したというのではなく、既に自宅で保管して十何年という物なので、遺品というのとはちょっと違うような。
娘の部屋に遺影として飾ってあった大きな写真(生前に前妻と一緒にいる場面で撮った物)も前妻は引き取らなかったのでオットの家に運び込まれたし、娘が普段使っていたマグカップもオットの家に持って来て、毎日水を入れ替えて写真の前にお供えしている。
なので前妻は自分の娘が亡くなって悲しい悲しいと口では言うし、いつも思い出すと言うわりには『物』を近くに置きたがらないのはなぜなのか、ヨリミチには理由が解らない。
ちょっと話が逸れたが、その遺品整理の時に、ヨリミチは犬を引き取る事にした。
犬、と言ってもペットではなくてぬいぐるみ。
娘は動物が好きで、過去には一緒に猫カフェに行ったりペットショップを覗いたりした。
初めて会った時にも『ヨリミチさんの家は何かペットを飼っていますか?』と訊かれた。
なので娘がいちばん最近に買ったと思われる動物のぬいぐるみをヨリミチが引き取って日本に戻った。
それが昨年の7月。
実家には私物をあまり増やしたくなかったのだけど、オットの自宅はリノベーションの最中だったので、そこにぬいぐるみを持ち込んでも埃まみれになりそうだし、という事で日本に連れて帰ったわけで、日本からチェンマイに渡る時はいつも荷物の重量制限ぎりぎりのヨリミチは『どのタイミングで犬をチェンマイに持って行ったら良いのだろう』と思っていた。
すると出発の数週間前。
オットからLINE 通話があって『娘が夢に出てきて「あの犬をチェンマイに連れて来て下さい」と言われたので今度来る時の荷物に必ず入れて下さい』と言うのだ。
そういうふうに簡単に言われても、あの犬はそれなりに大きさのある物だからスーツケースに入れるとしても結構スペースが必要だし、リュックに詰めるとしても手荷物検査で何かが引っ掛かって中身を全部出す事になったら公衆の面前であのデカい犬を出すの・・・?と数週間悩む事になった。
結局犬はスーツケースに入れてみたりリュックに入れてみたりして、最終的にはスーツケースの隅に収まってチェンマイに戻って来た。
そしてオットの家の娘の部屋のベッドの上に落ち着いている。

